「出てくるものだけ」

ライブ活動(歌っている)斉藤めいのブログ https://saitome.localinfo.jp/

ほんの少し願うなら

祖母が言った。

「歌っていうのは、優しいものなんだから。

 (人を傷つけ、追い詰めるのなら)歌う資格はないのよ」

 

核心をついたような言葉に私は驚いてしまった。

それは、いつも「いつまで歌ってるの?結婚は?」とか言ってくる祖母に、どうせ私の音楽などわからないだろうし、音楽なんてわからないだろうと無意識にどこかで思っていたのだと思う。

でもちゃんと考えを巡らせたら。戦争を、貧しい時代を経験し、身近な人の死や、長く生きてきた分だけの人間同士の軋轢など、様々な経験をしてきた祖母の世代の心を癒してきたのは、歌謡曲だったのだろう。あの、本当の『歌手』がたくさんいたような時代の音楽を、生活の中で骨と肉に染みるほど、聴いてきたのだろう。

聞き手としてであろうが、私なんかよりよっぽど、歌に心が込められているかどうかを敏感に感じ取っているのだ、この世代の人達は。と分かった。私そこまで、想像できていなかった。

 

私は今まで、自分と違うものを「どうせわからないだろう」「わかっていないだろう」と思ってはなかっただろうか。

自分の表現するものが高尚だと信じるプライド、高潔な精神。そういうものは、歌であろうがなんだろうが持っていてしかるべきものだけど、願わくば、それに付けて『他者への優しさ』が、想像力があって欲しいと願ってしまう。

 

それさえ押し付けだ、傲慢だと言われても、私はここで密かに祈っているだけです。

 

また考えすぎたら、友人がふと言った

「頭で考えて作ったものより、心で作ったものの方が、なんだかストンと来るよね」

という言葉を思い出します。