勇気は5年越しに使う
今日路上ライブをした。
「あー、よくいるよね、道端で歌ってる人」
とお思いだろうか。そうだ、別になんでもないことだ。ある人からしたらなんでもないこと。
でも私からしたら4年越しだ、4年越しの思いで、勇気だ。
勇気を出すのに4、5年はかかるんだ、私は。
そもそもライブハウスで歌いだすまでに、5年の潜伏期間があった。
それまではずっとカラオケで一人歌っていた。いつか人前で自分の曲を歌うんだ、と思いながら、それでもずっと出来なかった。
怖かったからだ。
人前で歌うのが。人に評価されるのが。誰かに「あいつの歌は大したことないな」と言われたりするんじゃないかと思ったり、無視されるのが怖くてできなかった。
「えっ歌なんてやってるの?」「才能ないんじゃない(笑)」と思われるのが、「へーなんかやってるけど、どうでもいい」って通りすぎられることすら怖かった。
自分が無価値なことをやってるのではないかと思ってしまうような、誰かの目線がすべて怖かった。
それでもこのまま死ぬのは嫌だ、と5年目にやっと動き出して、
ライブハウスで歌い始めてもうすぐ4年、緊張はするけれども大分普通になってきた。
でもライブハウスと路上、どちらが緊張するかってそれは人によるだろうけど、私としては路上というたくさんの人々が通り過ぎてく場所で歌うのは、またまったく別の勇気が必要だった。
だからライブハウスで歌うのには慣れても、路上はまだすごく怖かった。
ライブハウスとは違って、用意された場所でないというか、歌を聴きに来てる人たちの耳に届けるわけじゃないから、道行く人に「うるせーな、お前の歌なんて聞きたくねーよ」と思われるんじゃないかとか、警察に「迷惑だやめろ」と言われるんじゃないかとか思ったし、やらない理由はいくらでもあった。
でも、どんなに誰かにやめなよって言われても、やってもやらなくても別に変らないんじゃないって言われても、でもやらずにいたらなんだか自分がずっともやもやし続けてしまう何かについて。別に失敗だってなんだっていいんだよ、やってみて「やっぱ意味ないかー」「向いてないかー」と思ったとしてもそれで別にいいんだよ、やらずに自分が自分へのわだかまりを抱えているよりは、という出来事を、やってみたんだよ私は。誰かにとっては取るに足らなくて自分にとってはとても勇気が必要なそのことを。
何回かね、友人に混ぜてもらったり、ライブ帰りに仲間と一緒のときに一瞬だけ路上で歌ったことはあって、
先週は伊藤悦士さんが見ててくれた中で初めてフルライブin路上をしたり、ちょっとずつちょっとずつ、それこそ4年間のちゃんと場所が用意されたライブハウスのライブや野外ライブで、貯めてきた、自信と勇気とわだかまりを持って。
そして今日は初めて路上で1人で歌った。初めて、なんの後ろ盾もなかった。
そしたらなんだかすごく不思議な夜になった。
文章にしたらきっとなんでもないことだけど、なんかいろいろ入り混じって、出会いも事件も起きた。挫けそうになり泣きそうになり、それでも孤独ではなかった。
人がたくさん集まったわけでも、投げ銭がたくさん集まったわけでも、なかったけど、
「人が行きかってすれ違って、それぞれの人生を歩いてるし、全部が全部きれいなものばっかじゃないだろう。でもその、目の前を通り過ぎるあなたの人生がどんなものか分からなくとも、幸福を願うし、美しいと思うよ。私を叱る人も、気にも留めない人も、それぞれの仕事をしているのだ。でももしも友好的に声をかけてくれたり無言で足を止めてくれたりして、ひと時を一緒に過ごせるのであれば、私にとってもこれ以上ない幸福だけど」というような気持ちになるような出来事が。
あ~~またなんだかよくわからないこと言ってるな自分!
でもそうとしか言い表せないよ!何も嘘じゃねー。
こんなちょっとのことにこんな4年越しの勇気を必要とする私は進むのがなんて遅いのかと思う。でもそれでもいいんじゃないかと思う、私には。
そもそも人前で歌うのなんて一生かかっても無理、というあの人にだって、私には一生かかってもできない何かがあるだろう。だから何年かかろうと、誰かと比べて随分遅かろうと、私にとってのもやもやを切り抜けてみせたぞ、ということに意味があるのだ。
勇気勇気、とかさんざん言ってみたけど、別に勇気なんて出さずに自然にできることがあるのならそれでもいい。
あなたに出来ない事で私に出来ることが必ずあるし、私にできないことであなたに出来ることが必ずあると思うとどんな人も称えたい。勇気が必要なことでも全然必要ないことでもどっちでもいい。
急に、目の前の現実が何か変わったわけではない。
路上ライブができたからって、目にみえるもの、人気や知名度が一気にアップしたわけではない。
それでも、自分で自分が決めてたことを出来たというだけで、私の明日は少し変わりそう。
4~5年の長い助走、ジャンプしたのは他の誰からみてもなんでもない高さの塀だけど、
私だけがとても感動している。でもそれでいいんだきっと。読んでくれてありがと。