YES
人間が好きだから歌を歌っている。
そう言った自分に、ものすごい速さで返答をする「本当か?本当に人間が好きか?じゃあ人間の、汚い部分、弱い部分、おそろしい部分、ダメダメな部分、狂気、残酷、嫉妬、虚栄心、哀しみ絶望、それをすべて見てもすべて承知の上で、それでも好きと言うんだな?本当に本当なんだな????」もう一方の自分。
外側にいる他の誰かなんかよりも、速く反応してきて、そしてしつこく執拗に疑ってくる。
揺るぎそうになる。だって確かに、あのときあの人の言葉にあんなに傷つけられたし、弱さにつけこまれ騙され、奪われ、無視された。
今だって、翻弄され、なぜ私だけを責めるのだと悲しくなり、なんて面倒くさいのだと、思ったりする。
それでも絞り出した声で「はい」と答える。
迷いながら疑いながら、ただ声だけは不自然な程強く。
根拠などはない。今までのすべてを清算できる理由などはない。
ただYESに舵を切り、それから後のことは出くわした時に考えよう、方向を定めたあとに、何かあったらまたそのときに考えよう、みつけていこうと思っただけのこと。
それだけのこと。